第三回アシテジ未来ミーティング
2020年10月08日(木)20:00~22:00 zoomにて
テーマ「子どもの文化の歴史を知る」第二弾 子どもについて語ろう。 
みんなで前回参加して感じたことや今目の前にいる子どもたちについていろいろな立場から感じること考えていることを情報共有しました。

まず最初に第二回アシテジ未来ミーティングに参加してみて

広報戦略室のメンバーの感想

▼前村

 前回から手探りでミーティングについて考えてきました。参加された皆さんの率直な感想がフォームに寄せられ、それを参考にしながら、どういう風に次のミーティングを進めるか話し合いました。感想の中の「子どもについて語ろう」という意見にすごく共感しました。金沢の黒田さんの感想を紹介します。「佐渡祭典の話や、子ども劇場の活動の広がりの話は面白かった。参加した子どもや家族はその後どうしたろうか。地域はどう変わったか、大人になって文化の豊かなコミュニティを作ったのだろうか。子どものための舞台芸術の恩恵を受けた当時の子どもたちのその後の様子を知りたい」
 確かに佐渡祭典の活動は勉強になりました。先輩の話を共有できるなかなかない機会だったので面白かった。その時参加した子どもたちは実際どうだったのか、今の子どもたちはどうなのか、知りたいし、子どものための文化芸術が一歩未来に向けて進んだ瞬間である佐渡祭典に参加した子どものことを掘り下げてみたいとも思いました。そこで「子どもについて語ろう」をテーマにすることにしました。

▼浜渦 

 私はふだん筑波子ども劇場で活動しています。自分の子どもが小4で劇場に入り、今、子どもは大学生で、私は劇場に残って地域の子ども達と活動しています。
 でも地域だけでやっていると視野が狭くなるので、首都圏の親子劇場の話を聞いたりしてきましたが、ここで話されるようなことを学んだことはありませんでした。子ども劇場と、学校と、創造団体と、三者が協力しながら子どものための舞台芸術の歴史を作ってきたんだなと、前回すごく学びました。佐渡祭典の頃は私は15歳くらいで、まだ子どもでした。考えてみると、叔母に連れられて子ども劇場には参加していたみたいです。その頃子どもだった人が大人になって、「私も小さい頃入ってました」と自分の子どもを連れてくる。世代は繋がっているし、もっと開かれたものになって、一緒に今の子どものこと、未来の子どものことを考えていければいいなと思います。

▼片谷

 前回の話は壮大すぎて、つかむのに必死でした。歴史を知ることは出来たし、資料も紹介してもらった。今日は皆さんがそれぞれの地域で子どもとどうかかわっているのか、グループセッションしたいと思って、すごく楽しみにしています。

▼森本

 全国フォーラムの代表で、アシテジ未来フェス事務局長の森本です。この学習会を「やろう」と発信してきました。子どもの文化にいろんな角度で関わっている人たちが今参加しています。でも、それぞれの持っている知識や見ている世界はバラバラな状態。それを共有できたらと思います。子どものための文化の歴史はあまりにも膨大です。前回もまだまだ話し足りなかったと思います。語られなかったことの中には、学校公演、学校演劇のことや、暮らしの中の文化の歴史があります。江戸の芸能や、野良歌舞伎、紙芝居や本、映画など、膨大な子どものための文化があります。それらについても語ってもらう場が必要だと思いますが、この間二回話を聞いたので、三回目は意見交換をしたいと思います。子どもを真ん中に置いて、一緒に子ども達は今どうなっているか、子どもの文化はどうなっているか、そこをみんなで語り合いたいと思います。語ることで、未来フェスを先へ進める一歩になれば。そこで、まず学校の今の現状を、山本茂男先生にお話しいただきます。

「学校の今」 山本茂男先生

森村学園初等部教諭 日本児童劇作の会会長 日本児童演劇協会理事
 私は、今の子どもをめぐる現状をお伝えしたいと思います。
ちょっと前まで、私は毎日子どもたちと一緒に表現活動を楽しんだり、触れ合ったり、教育の中に演劇を取り入れて活動してきました。学芸会も楽しくやり、私も出演したりしました。
2020年3月3日から4月6日まで、コロナの流行によって学校は休校になりました。4月6日に緊急事態宣言が出され、学校が再開したのは6月1日。その間はずっと自宅謹慎でオンライン授業でした。昨年は1年から6年まで集まってみんなで卒業式のお祝いをしましたが、今年は在校生なし、歌なし、保護者は卒業生一人につき2名だけの卒業式でした。学芸会もなくなりました。
 私は1年生の担任ですが、入学式が出来ず、オンラインで初対面することになりました。3人の新任の先生は、何もわからないまま画面でクラスを担任することになりました。でも情報機器のトラブルでうまくつながらない家庭もあります。入学式は6月30日にやっと行われ、初めて直接子どもたちに会いました。それも、一学年120人を40人ずつ三回に分けて、15分位の、保護者のみで在校生のお祝いも無い式になりました。学校が再開しても、感染防止ガイドラインによって分散登校となり、1日にクラスの半数ずつが登校しました。
 そして今は、自宅で健康チェックし、校門で消毒、検温、マスク着用。体調がちょっとでもいつもと違ったら二日間お休み。授業中も大声を出してはだめ、触れ合いも話し合いも禁止。私は窓を全開にしてマスクして音読をやっていますが、ガイドラインをしっかり守る先生は音読もやりません。理科の授業などでどうしても話し合いが必要な時はビニールカーテンを上から降ろして仕切りをします。笛や合唱の時間は壁を前に立てて、その中で歌います。学校参観は、これまでは毎月一回、いつでも見に行けたのが、オンライン参観になりました。週一回、全学年が集まる全校朝会も今はありません。
 遊びは、外に出る時はマスクを外していいことになっています。でも、サッカー、バスケットは禁止。遊具はソーシャルディスタンスを保って順番に使用。運動会は一学年ごとのスポーツ大会に変更。徒競走や、全員リレー、ダンスをやり、保護者はオンラインで見ることになりました。
 遠足も、グループ行動は出来ず、列を作って全体行動のみ。子どもが楽しみにしているおやつ交換は禁止。一人1シートに座って、一方向を向いてお弁当。それでも遠足に行くと子どもはキャーキャー言って喜んでいます。
 音楽会は、以前はホールを借りてやっていましたが、それも中止。展覧会は、体育館での展示はなくなり、廊下に置いて、何人かずつ予約した保護者が見るだけ。学芸会は今検討中ですが、「やったほうがいい」という先生と「やめるべきだ」と言う先生で真っ二つ。劇の練習はどうしても子どもが関わりあうから、ガイドラインに反するので不適切だという先生もいますが、私はなんとかやる道を探りたいと思っています。
 宿泊行事もたくさんあったのに中止。鑑賞教室も、毎年やっていましたが、体育館に集まると密になるからと中止。今できることは何なのか、手探りしています。三密回避で触れ合えない、大声を出せない、動けない子どもたち。私は子どもたちに「学校楽しい?」と聞いて回っています。そうすると「楽しい」と言う。「何が楽しいの?」と聞くと、「山ちゃん(山本)の授業が楽しい」と言ってくれます。私は授業の中で笑わせたり声を出させたり、いろいろやっています。でも劇的状況を作り出す取り組みをやることは難しい。学校教育以外の場での実施に期待するしかないのか、と思っています。
 でも、指をくわえて批判ばかりしていても埒が明かないので、学校が子どもにとって価値のある場であること、生身の人間に触れ、体温を感じることの重要性を訴えていこうと思います。主語は「子ども」。子どもが安心して笑えること、自己肯定感を持てること、他者を尊重すること、主体性を持つこと、そのきっかけをくみ取ることの楽しさ、それを与えられるのが学校です。今は苦しい状況だけれども。

自分の出会った子ども―グループセッション

 
5~6人ずつのグループに分かれえて、「自分の出会った子ども」について語り合うグループセッションを45分間行い、それぞれ大いに語り合って盛り上がりました。
その後、グループごとに話し合ったことを発表しました。始まりの時より、みんな表情がほぐれています。
<浜渦グループ>
 山本先生が現場で遭遇した事例を共有できたのが大きかった。山本先生は一年生の担任だが、学校が初めての子たちに入学式が無かった。入学は本当はおめでたいことで、「友達沢山できるね」とお祝いすることなのに、実際には出来ない状況。大声を出せない、給食もシーンとして食べる。話し合いの中で6年生で、受験する子としない子の格差がコロナ前より拡大してきているという報告があった。現場は大変なんだと痛感した。教育機関の中では保育園はまだ日常に近く、注意や感染防止は徹底しているが、まだ学校よりフランクな生活がおくれているようだ。2月から10月まで、ずっと緊張状態が続き、これをリカバリーできるか不安を持っているという話も出た。一年生の悩みもあるが、6年生は卒業までの時間の方が短くなっている。難しい局面に来ていると思う。
 創造団体としては、学校公演がなくなってきて、秋になってちょぼちょぼ始まった。一度に見られる人数は100人から150人。地域や学校によっては、一回の公演を二回、三回に分けて上演している。「うちは5回やります」ということを売りにしている劇団もある。
<片谷グループ>
 子どもには遊ぶことが大切。安心できる環境を作る大人がいなければ子どもたちはのびのびできる。そういう環境を作れるような大人を増やすにはどうしたらいいか? 今日の話を次につなげたい。
<漆畑グループ>
 コロナ下で発見したこと。リモートでワークショップをやると、一人ずつ子どもを見ることが出来る。大人数でやると引っ込み思案になる子も、一人ずつ見ることで元気になった。リモートを一概に否定はできない。また、「中学校まで普通に学校に行っていた子が、高校に進学し、入学式がなく、リモート授業だったので、その間に考えた。中学校まで忙しかったから、高校はもっと忙しいだろうと思っていたのにそうではなかった、学校へ行きたくなくなったという。自分を見直すきっかけになったり、自分の人生を考える機会になっているのでは」という話も出た。今後は、zoomの良さよりも、「やっぱり生がいい」ということを押さえておかないと。単純に「元に戻ればいい」ではなく、未来へつながることをみんな考えている。創造と想像が大事。
<柳グループ>
 「子どもは意外と元気だよ。制約があって大変だけれど、それなりにしたたか」という声が現場の人から出た。三密は子どもに必要、三密を守らなきゃ、と言う話で盛り上がった。マンションに住んでいる人からは、「地域が子どもに寛容でなくなった。避けろと言われる三密こそ人間には大事。そのことを、子どもも大人もスポイルされている」という話も。私(柳)は手術をしたばかりで、私を見ると友人も家族もあとずさりする。私を大事に思うから、「感染させちゃいけない」と思うから。でもさみしいし、疎外感を感じるということが裏返しに分かった。子どももそうなのでは。壊しちゃいけない何かが壊されている。それを取り返さないと。子どもが元気なのは間違いないが、「子どもが大事」といってスポイルすることがないかどうか、大人の在り方を語り合う必要性を感じる。
<宮本グループ>
 うちのグループにはいろんなバックグラウンドの人が集まった。今の子どもの状況と、「今の子どもは昔の子どもと変わったのか?」をテーマに話し合った。運動会中止、マスク着用など、コロナで環境が変わった。インターネットやzoomが普及した。個別に顔を見ることでいいこともあった。「負を楽しむ」ということも大事。三密を避けるために全部禁止、ではなく、「やる時には思い切りやる」ことも必要では。「子どもは本質的にはそんなに変わっていない」という声も。大事なのは大人が、禁止したり決め事を押し付けるのでなく、子どもにもっと考えさせたり、表現する機会を作ることだと思う。
<新垣グループ>
 千葉県での文化庁の派遣事業で、今までは先生が作品を決めていたが、子どもの希望をとって作品を選んだ学校があった。子どもたちは本当に上演を楽しみにしている。高学年対象作品で、コロナの中、「無料で30分の作品をやります」と声をかけて何件か公演が決まり、今まであったことのない子たちと会うことが出来た。前向きな話も多い。子どもがいろんな関りから学ぶ場がない今、大人はどんなサポートが出来るのか。新しいスタイルを探り、意識して「密」を作ることも大事では。
 
<林グループ>
 中高生の活動をしているが、彼等は従順に真面目に自粛している。恒例の久喜の親子劇場の中高生の夕食会を、「コロナだからzoomでやる?」と子どもたちに聞いたら、「zoomならやりたくない。リアルがいい」という。そういう声を聞くとホッとする。子どもはきっと言いたいことがいっぱいある。子どもの今の環境は大人の対応次第で決まる。どの場面でマスクをするか、しないか。プールも、うちはやるが隣の学校はやらない。自分たちでちゃんと選択すれば、どんな活動が大切か伝え始めれば、共感する人も増えていくのでは。
<前村グループ>
 中学一年の女の子が、卒業式が出来ず、入学式も出来ず、いきなり友達に会えなくなって、緊張を言葉で伝えることができず、体で感じていて、おもらししてしまった。普段はありえない事でびっくりしたという話がでた。大人は「疲れている」と言えるけれど、子どもは言えない。放課後子どもがどう過ごしているか。「うちの学童では全然密になってるよ」という声にホッとした。少しでも触れ合う環境があるのは救い。
<森本グループ>
 文化と暮らしは会話から生まれる。荒れた子は親が変わると変わる。今の父母は30代で、携帯を高校から持ち始めた世代。実体験が少ない。大人が楽しむと子どもは自由になる。実体験を大人も子どもも共有することが大事。そこを周りの大人が仲介できるといいね。食べたこともないものを食べたいとは思わない。「一緒に体験しよう」という場が必要。

次回ミーティング
発表のあと、次回のミーティングのお知らせをしました。
10月22日(木) テーマ:「遊ぶ」を知る
TOKYO PLAYの嶋村さんをゲストに。またグループセッションを行います。次回もぜひ参加を!