第二回アシテジ未来ミーティング レポート
2020年9月17日(木)20:00〜22:00 zoomにて
テーマ「子どもの文化の歴史を知る」
講 師:高坂諭さん、清水忠さん
司 会:前村晴奈
参加者:82名

 

第二回目は、《子どもの文化の歴史を知る》をテーマに、アート企画ひだまり代表の高坂諭さんと、元子ども劇場おやこ劇場全国連絡会事務局の清水忠さんにお話を伺いました。とても濃い時間となり、文字でお伝えできないほどの内容でしたので、今回はお二人から語りを終えての感想をいただきました!
また、佐渡宣言の資料もご覧いただけたらと思います。
 

 
語り終えて   アート企画ひだまり代表 高坂 諭さん
 
 少し補足説明をしたいと思います。1948年(昭23)発足の日本児童作家協会。10
年後の58年、日本児童演劇協会と改組。日本の児童劇の国際化も視野に、世界の児童劇の情報収集を計る。63年、「ソビエト児童演劇」西郷竹彦、「ヨーロッパの演劇」(帰朝報告)栗原一登。64年、「ソ連」村瀬幸子。「東独・西独」加藤衛。65年、「アメリカのクリエイテブドラマテックス」(ノースウエスタン大学製作映画)、「欧米の児童演劇」岡田陽。この様に、85年”佐渡祭典”の20年前に、「世界の児童劇を聞く会」を開催し、やがて来る”国際交流”の助走をしていた先達、大先輩の志と歩みが、各祭典を経て、今回の「第20回アシテジ世界大会/未来フェス」へと繋がっているのだと思う。不協和音のない、成功を願わずにはおれない。
 話題を変えて、清水忠さんとの思い出を。「宝のつるはし」再演班で福岡入り。何日か後、忠さんの居る劇場へ。所が、台風が近づき、風雨激しく、ついに停電。中止か?と思いましたら、やる! 大型の発電機を持ち込み、舞台の上には裸電球がー。雨風の強い中、230~240名の来場。さあ、いよいよ開演。所が、電圧が低くテープが遅い!朝鮮舞踊か何か?よく分からない開幕。昼行灯での進行。後半、やっと電気が付きましたが。終えて、公演班責任者だったので皆を楽屋に集め、「700名の会員と聞いているけれど、楽しみにしていたであろう大勢の子どもたちが観れなかった。もう一度此処で、本来の”つるはし”を観て貰いたいと思う。もちろん無料公演でと思っているが、どうだろう?」と相談したところ、皆共感してくれ、後の事を本間さんに託し、沖縄公演へ。その後、再演が実現できた事は、忘れえぬ思い出である。
 

 
語り終えて    
元子ども劇場事務局・編集オフィス耕人社主宰 清水 忠さん
 
 「子ども劇場」は、日本の児童文化にとってのエポックメーキング、つまりそれまでの時代とは違った意義・特色を持つ児童文化の先駆けとなりました。それまでは行政の役割だと認識されていた「子どもを対象にした文化政策」や「文化事業」の内容に影響を与え、協同の場を生み出してきたのも事実です。また創造団体とともに「作る側」「観る側」の枠を超えて、共に文化を作り出す関係をもったことも児童文化史に於ける画期的な出来事でした。
 そのことは児童演劇の提供と享受の場や機会を飛躍的に増やしましたし、そのことで作る側の創造意欲が高まり、幅広い年齢層の子どもたちを視野に置いた新しい手法や革新のキッカケも生まれました。その結果として「劇団は到達しえた最高の創造を子どもたちに届けるよう努力」し、「子ども劇場は鑑賞例会活動の成功と発展のために努力する」という合意も生まれました。ここまでは歴史の事実としてしっかりと受け止めたいことです。
 しかし、次の、その先の展望をどう切り開いてきたのかということに私たちは目を向けなければなりません。
 創造・発展とは、同時に数多くの矛盾や課題を抱え込むことでもあります。そのとき常に自己革新性を失わないことが大事だと考えます。だから抱え込んだら、また手放す。そのくりかえしの中にこそ、子ども劇場にも創造団体にも、次の新しい姿が生まれていくのだと思うのです。
 前回話題となった「佐渡祭典」は、児童演劇、舞台芸術、児童文化運動の到達と課題を客観的に見つめあい展望する場として1985年に開催されたものでした。しかし、成果と共にそこに映し出されたほころびや未成熟もありました。それはとりもなおさず企画に携わった者すべての存在と関係、またその時代に生きた大人達の現実でもあったと思います。
 だからこそ常に「咀嚼し、批判し、みずみずしく討論する」。自らの現実に甘んじ、目をつぶり、口をつぐむべきではないと考えます。それが「新しい子どもの文化」の創造に携わる全ての大人の責任だと思うからです。「子どものことを語る」ということ、それは「大人のことを語る」ことでもあると思います。    

 
広報戦略室として参加した立場としての感想
浜渦
子どもと文化の分野で、子ども劇場が担ってきた役割について学び、正直驚きました。地元では30年も活動が続いているのに認知度は低く、「子どもとお母さんの会」と思っている方も多いです。今後、劇場と学校、行政、さまざまな立場の大人が、どれだけ力をあわせていけるのか、未来フェスティバルが関係を再構築していく場になればいいと思います。
 
子どもたちが主体的に動くためには、エネルギーを充電することが必要。それには、大人の時間やアイディア、余裕が必要だと感じました。ちょっと立ち止まる時間やいろんな方向で物事を考えたりみたりすることができる舞台芸術を拡げていきたいです。遠い遠い時代には、心にも時間にも余裕があったのでしょうね。
 
前村
お二人のお話を伺い、今私たちにできることは、子どもの周りにいる様々な立場の大人たちが繋がり合い、意見を交わし、互いに認め合いながら継続していくことだと改めて感じました。開催後の人のネットワークや、フェスティバルから生まれた新たな活動や文化を大切に育てていくこと、そのことをイメージして、本番まで頑張ろう!と、密かにとても前向きな気持ちになっています。